次の瞬間
僕は駆け出し
「な……藤岡!」
気づけば奈菜の肩を掴んでいた。
それに振り向き、驚いた瞳で僕を見つめる奈菜。
僕の声に振り返る周りにいた生徒たち。
その視線が一斉に注がれる。
でも、次の瞬間にはもう、生徒たちは何事もなかったように、それぞれの目的に向かって歩き出す。
僕は自分の行動に驚きながら、
奈菜の肩を掴んでしまった手を離し、
「ごめん……
藤岡に話したいことがあるんだけど、時間あるかな?」
そう言うと、
僕に向かって頷いた奈菜は、
僕の後ろを俯きながらトボトボとついて歩いてきた。
そして、僕はあの日以来、立ち入ることが無かった場所に足を向け
階段を登ると、薄暗い踊り場の重たい扉を開けた。
そこから一歩踏み出した僕は
燦々(さんさん)と降り注ぐ優しい陽光に、思わず目を細める。
それから、屋上の真ん中辺りに来たところで僕は立ち止まり、奈菜を振り返った。
すると、奈菜も俯いたままその場に立ち止まる。
「藤岡、顔を上げて?」
僕の声に、不安そうにゆっくりと顔を上げる奈菜。
重なる視線に僕の全身は熱を帯びていく。
僕は胸の高鳴りを抑えるように、
目を閉じ、ゆっくりと大きく呼吸を一つして、そっと目を開けた。
「奈菜…もし奈菜が僕を許してくれるのなら……
もう一度、僕と……
僕とやり直してくれないか?」
僕の言葉に目を見開く奈菜。
僕たちの間を温かな風が吹き抜け
奈菜の香りがほんのりと僕たちを包み込む。
奈菜は髪をなびかせながら
ゆっくりとまばたきをして、不器用に微笑んだ。
そして
小さく首を横に振った。



