それから数ヶ月。
僕は言葉に出来ない…いや、言葉にしてはならない苦い想いを抱きながら、
辛い夜を何度も越す。
奈菜が瞳に映る度、
溢れる想いが零れないように胸に押し込め、
奈菜の背中に“奈菜”と叫びそうになる声を、何度も飲み込んだ。
自分自身で決めたこととはいえ、
僕にはそれが苦しくて
それから逃れたくてたまらない。
だから、僕は奈菜が1日でも早くこの心から消え去ることを願いながら、
奈菜のイヤなところや好きな理由を思い出の中に探す。
理由が見つかれば、
忘れることも少しは簡単に出来ると思ったから……
でも、捜しても考えても、その答えは見つからない。
浮かぶのは大好きな奈菜ばかり。
皮肉なことに、僕のしていることは、ただ自分の想いの深さを確認する為だけのものになっていた。
そこで
漸く僕は、奈菜がいつか言っていた言葉の意味を知る。
『好きなものは好き。
そこに理由なんて必要ないの。
理由があるうちは本物じゃないのよ』
そんな日々の中、
学校では僕たち教員が、転勤希望を出す時期がやってきていた。
このまま、奈菜が居ない場所に行くことができたなら、
少しは楽になるのかな?
でも……
僕は奈菜がきちんと卒業するまで見守りたい。
奈菜の高校生活を最後まで見届け
送り出してやりたい。
とはいえ、僕は今の学校に来て五年が経つ。
そろそろ、異動をしてもおかしくない時期で、転勤希望を出さなくても、異動になる可能性は十分にある。
でも、出来るなら
あと一年……
もう
話せなくても
奈菜の笑顔を見られなくても構わない。
何も望まないから……
ただ、もう少しだけ
奈菜の近くにいたい……



