僕の愛した生徒



ガラガラガラッ……

突然、扉が開く音。


僕は奈菜の側から離れ、カーテンを出る。


そこには、席を外していた保健室の先生が戻ってきていて、

僕はその先生に奈菜の様子を話すと、後のことを全て任せて保健室を後にした。



この想いを胸に秘める

決心をして……






その数日後。


職員室にいる僕の元を訪ねてきた奈菜。

僕は奈菜に職員室を出るように促すと、一緒に廊下に出る。


「どうした?」

「あの…先日はありがとうございました。
小野先生が保健室に運んで下さったと聞いて……」


当たり前だけど、奈菜は他人行儀に僕の視線をかわしながら話した。


「体調はもう良くなったのか?」

それに、俯いて返事だけをした奈菜。


そんな奈菜に

「ご飯、きちんと食べてる?」

と、僕が尋ねると、奈菜は驚いたように顔を上げる。


「前よりも軽くなってた気がしてさ」

僕が微笑みかけると、奈菜はまた俯いて返事をした。


「それと……
学校に必要のないものは身に着けてくるなよ?」

再び顔を上げて、キョトンとする奈菜。


僕が自分の胸にトントンッと手を当てて見せると、奈菜も自分の胸に手を当てる。

そして、それに触れたのか、奈菜は顔を赤く染めて、その場所をギュッと握るようにして目を伏せた。


「あの…これは……」

しどろもどろになっている奈菜は

「没収ですか?」

と、続ける。


「没収して欲しい?」

僕がイタズラに聞くと、奈菜は僕の目を見て

「…小野先生になら構いません」

そうはっきりと言った。


奈菜の顔に表情はないが、その瞳は力強く僕を見据えている。


僕は少しの沈黙と、重々しい空気を吹き飛ばすように、奈菜の視線を解いてフッと笑う。


「今回は見逃してやるよ。
それに、一度、贈ったものを返してもらうつもりもない。

だから、他の先生に見つからないようにしろよ」

僕の言葉に小さく頷き

「ありがとうございました」

と、奈菜は浅く頭を下げて僕に背中を向けた。