僕の愛した生徒



思い出の中には

僕が見過ごしていた奈菜のサインが沢山あった。



奈菜の言葉に、僕がきちんと向き合い、想いを素直に言葉にして伝えていたのなら

今とは違う僕たちでいられたのかもしれない。



浮気も……

きっと、奈菜はそんなことをしてはいない。


奈菜をちゃんと見ていたなら

奈菜にそれが出来ないことくらい容易に分かった筈なのに……


それに

あの時、奈菜は涙を零しただけで
否定も肯定もしなかった。


あの涙は覚悟の涙?


奈菜は最後に僕の気持ちに賭けをしていたんだろう。


だから、敢えて玲香と別れた理由を使った。

同じ条件を……


僕がそれを許さないことも見越して……


奈菜は、僕が玲香の一度目の浮気は許したことを知っていたから

『私の一度の浮気は
許せない……よね?』

と、言った。




そう言った奈菜の気持ちは
今の僕でも計り知れない。


でも、そんな時でも奈菜は
すべてを許さなかった僕に


それでいいと、

僕は何も悪くないと……

微笑んだ。




なんで僕は今になるまで
気づかなかったんだ。



僕は自分の愚かさに呆れながら

奈菜に近づき、親指でそっと涙を拭うと、

僕が知っていた温度よりも熱い、奈菜の頬に優しく触れた。




すると

突然、脳裏に閃いた仮定。

僕はそれにハッとする。



いや、違う…奈菜は賭けただけじゃない。


もしかしたら…奈菜は……