僕は記憶の糸を辿る。
記憶の中の奈菜は、いつも表情豊かに、僕にその心を教えてくれていた。
でも
いつからか
それは無くなって、いつも悲しそうな瞳で、どこか遠くを見つめていた。
寂しそうな目をして、
何度も僕に何かを言おうとしていた奈菜。
けれど
その度、その続きは聞けないまま
……僕を『好き』だと言った。
何度も
『私のこと好き?』
と、僕に尋ねた奈菜。
夏の終わりのあの夜には、
僕に幸せかと聞いた。
付き合い始めの頃には、
僕の好きより自分の好きの方が大きいと無邪気に笑って、
星空の下では、玲香の話を聞いて涙を流した。
あの涙の本当の意味は……
もしかして、僕が今も玲香を愛していると思ったから?
だから
『誰かの代わりでもいいと思った』
そんなことを言ったのか?
自分が玲香の代わりだと……
静かな夜に
僕の腕の中で微かに震えながら
『ずっと一緒に居られる?』
と、聞いた奈菜も
『心配をすることなんてないよね?』
と、尋ねた奈菜も
僕が妬くわけないと思っていたことも
指輪が欲しいと言いながら
『やっぱり無理だよね』
と俯いた奈菜も……
僕が自分を好きじゃないと思いながら、
僕を試していたのか?
想いを確認しようとしていた?
そして
奈菜は最後に
『私たちが付き合っていた間、
秀は一度でも私を…私をちゃんと見てくれたことあった?』
と聞いた。
覚悟をしていたと言い、
『知っていたのに…ずっと苦しめてごめんね』
涙を見せずに儚く微笑んだ奈菜。
すべては
僕が奈菜以外の誰かを見ている思っていたから……
だから
片思い…と……?
奈菜はずっと……
最初から、僕のことをそんな風に見ていたのか。



