僕の愛した生徒



大勢の生徒と教員たちの視線を一斉に受けながら、僕は奈菜を横抱きして体育館の扉を目指して歩く。


そこまで、まるで花道のような通り道を作る生徒たち。



意識のない奈菜を抱きながら歩く僕の腕からは、

一年前よりも奈菜が軽く、華奢になっていることが伝わる。





そして

体育館を後にした僕が向かうのは保健室。


そこに到着した僕は、取りあえず奈菜をベッドに寝かせ、

少しだけ沈んだベッドの上で、目を開けない奈菜に布団をそっと掛けた。


僕はカーテンを閉めて、その部屋に養護教諭の姿を探す。


けれど、そこには見当たらず、
僕は勝手に、机の上に立てて置いてあるいくつかあった体温計の中からそれを適当に一つ取ると、

それを手に持ち、再び奈菜の元に近づいた。



静かにカーテンを開け、

「藤岡?」

と、僕は声をかけながら、軽くトントンと奈菜の肩を叩く。


しかし、目を開ける気配がない奈菜。


僕はその様子に熱を計ることを断念し、

少し苦しそうな呼吸をしている奈菜の制服のリボンを緩めて、
シャツの一番上のボタンを外した。




すると、首もとからちらりと覗かせたシルバーのチェーン。



もしかして……



僕はそれに少しの期待を寄せて、
大きく高鳴り始めた胸の鼓動を抑えながら

恐る恐る、そのチェーンに触れてみた。



そこで目にしたのは

僕にも見覚えのある、クローバーのネックレス。



どうして…つけてるんだ……?



ほんの少しの嬉しさに疑問が入り混じり


「どうして……?」


僕は眠っている奈菜に問いかけてみた。



当然それに答えが返ってくる筈もなく、物音ひとつしないこの部屋。


僕はしばらく奈菜の寝顔を見つめた。




なんで…なんで、奈菜は今もこのネックレスを……?



僕は何も言わない奈菜に答えを見つけられないまま、

この場を離れようと、奈菜に背中
を向け、カーテンに手をかけた


……ちょうどその時。