今更ながらに気づいた想い。
未だ鮮明に蘇る思い出。
どうして……
僕はあの時、奈菜を許さなかったんだろう。
もっと、奈菜と話をすれば…そうすれば今頃も……
次々と湧き出る後悔。
もっと、ああすれば良かった。
こうならば良かった。
そんなことばかりが浮かぶ。
けれど、時間は戻らない。
もうどうすることも出来ない。
それに、奈菜には他に想っている奴だっている。
だから、僕は“この現実を受け入れるしかない”
そう言い聞かせて、早く時が過ぎることをただ祈った。
そして
秋が深まるある日の全校集会。
僕はいつものように、僕の受け持つクラスの生徒を整列させ、教員の所定の位置である体育館の端で生徒の方を向き、並ぶ。
しばらくすると、生徒たちの私語でざわつきだした体育館。
そこに響いた生活指導の先生の怒鳴り声。
一瞬にしてそこは静まり返った。
そこで、今日も僕の目は、三津谷の隣で並んで立っている奈菜を捉える。
瞳の中にいる奈菜は、顔を赤らめ
いつもと少し様子が違った。
何となくだが、しんどそうに見える。
その時
奈菜の体はゆっくりと揺れ、床に崩れていった。
それを目の当たりに見た僕の体は
奈菜に向かって飛び出す。
誰にも奈菜に触れさせたくない一
心で、生徒の間を縫って奈菜に駆け寄り、しゃがむと
“藤岡”と何度か名前を呼んで、奈菜の額に手を当てた。
そこから久々に伝わった温度は
やけに熱い。
僕はそのまま奈菜を抱き上げた。



