僕の愛した生徒



それからすぐに入った春休みは、
奈菜と顔を合わせることも無かった。



そして、新学期。

僕は再び一年生の担任を受け持つことになり、奈菜のクラスの教科担当になることは無かった。


部活の顧問は今年もまた陸上部。


だから、奈菜と僕を繋ぐものは
一切なくなった。



でも

よく目にする奈菜の姿。

僕はその度に苦い思いが込み上げる。



どうしてこうも奈菜は僕の視界に入って来るのだろう。



ずっと疑問だった。


“それなら見なければいい”


もう一人の自分が囁いて

気がついた。


奈菜が僕の視界に入って来るのではなく、僕が奈菜を探していたことに。


…何故?……



その答えが解らないままに季節は流れて、

あれから半年が過ぎようとしていた。





春には

満開の桜を見る度に、真新しい制服に身を包んだ、あどけない奈菜を思い出した。

中間テストを行っている教室では
奈菜と初めてキスした日を思い出し、

夏になれば、暗くなるまで待って合宿所で奈菜と話をしたことや、

秘密の補習で笑いあったこと。

夏の終わりには青空の下を一緒に歩き、
初めて肌を重ねたあの日が脳裏に蘇った。



秋になった今。

僕は満天の星を見る度に、
僕の為に大粒の涙を流した奈菜を思い出す。



僕は奈菜の裏切りを許せないはずなのに、奈菜のことばかり考えている。

奈菜から着信があるはずのない携帯電話を眺めている。