僕の愛した生徒



「塩?」

「そうですよ。
フラられたばかりなんです」


秋山は切なそうな目で奈菜の方を見ながら笑った。



……秋山がフラれた?



「でも、付き合っていたんじゃ……」

「そう見えてました?
実際、そうなら嬉しかったんですけど……

ってか、自分でもイケると思ってたんですけど、告白して見事に玉砕」


秋山はそう宙を見て笑った。


「そうだったのか……」

「えぇ。奈菜ちゃん、ずっと片思いをしている人がいるんだって。

冗談でも、手すら繋がしてもらえなかった」



……………えっ?



僕は秋山を凝視する。




じゃあ、奈菜の浮気相手は秋山じゃなかったのか?


それなら…相手は誰だ?



「あっ、そうだ!
先生は奈菜ちゃんが嫌いなの?」


秋山は突然、思い出したように
僕に尋ねた。


「生徒に嫌いも好きもないよ。
なんで?」

「女子が噂してたからさ。
“小野先生は奈菜ちゃんを嫌ってる”って。ちょっとしたことでも奈菜ちゃんには厳しいんでしょ?」



生徒たちにはそんな風に映っていたのか……



「それは……」

「それで、奈菜ちゃんに一度それについて尋ねてみたんだけど、

“自分が悪いから”って。
“そうさせたのは私だから”って言うだけで……

奈菜ちゃんと、なんかあったんですか?」

「いや…別に……」

「それなら、奈菜ちゃんをイジメないで下さいよ?
いい子なんですから」


秋山は最後にそう言って、僕に背中を向け、この場を立ち去った。




そんなこと秋山に言われなくても知っているよ。

秋山よりも……




それにしても、奈菜に片思いの相手?


ずっと……?