僕の愛した生徒



奈菜は全てを受け入れる準備をしているみたいに、柔らかい表情で僕を見つめる。


そう、それはまるで僕からの終わりの言葉を待つように。



奈菜に辛い思いをさせて、
そこまで追い詰めていることにも気づいてやれなかった僕。



でも

奈菜の過ちはどうしても許してやれない。



奈菜……

責任を果たせなくてごめん……





「別れよう」





奈菜は僕の言葉に優しい眼差しで満足そうに頷いた。



再び僕たちを襲う沈黙。

それを破るのは僕。



「奈菜……」

「なに?」


屈託のない顔で僕を見上げる奈菜。


「どうして、僕に話した?
隠そうと思わなかったのか?」


それに、奈菜は困ったような表情を浮かべ、


「だって、私には嘘をつき通す自信なんてないもの。
きっと隠しきれないから……」

と、悲しそうに笑った。



確かにそうかもな。

奈菜は嘘がヘタだからな。



「そうだな」

僕はそう言って奈菜に微笑んだ。



久しぶりに、穏やかな気持ちで向き合う僕たち。

顔を合わせることが何となく照れくさくて、

僕たちは顔を見合わせて笑う。



この感覚が懐かしい。


でも

これが最後……



笑いあう僕たちに、終わりを告げる冷たい風が吹き抜ける。


僕たちはそれに笑顔を消した。



そして、奈菜は真っ直ぐな瞳で僕を見つめる。


「秀、最後に一つだけ聞いてもいい?」

「なに?」

「私たちが付き合っていた間、
秀は一度でも私を…私をちゃんと見てくれたことあった?」



その言葉の意味を理解出来ない僕は、奈菜を見つめて、その意味を探す。

でも、何も見い出せなくて答えられない僕に奈菜は続けた。



「レイカさん……」