僕は奈菜の突然の言葉に息をする事も忘れ、
ただ、奈菜を見つめた。
ウソだろ?
奈菜に限ってそれはないだろ……
冷静に思考を働かせれば、奈菜に限ってそんなことが有るはずはない。
僕は重なる視線を解いてフッと笑い
「奈菜、なに言ってんだよ。
そんな嘘はいらないから」
そう茶化した。
でも
奈菜の表情は微動だにせず、
その瞳は真っ直ぐに僕を見据えていた。
奈菜の瞳に映る僕が揺れる。
「嘘…だろ……?」
零した僕の言葉に、
奈菜は首を縦に振ることも横に振ることもしなかった。
ただ……
ゆっくりとまばたきをした
奈菜の目からは、光る雫が零れ、
一筋の涙となって頬を伝った。
同時にテトラポットにぶつかる波の音が大きく響きわたる。
それが、僕に
“これが現実なんだ”と突きつける。
「なんで?」
僕は奈菜の濡れた瞳に静かに訊く。
すると
奈菜は絞り出すような声で
「……寂しかった……から」
と、言った。
僕は大きな溜め息とともに奈菜から顔を逸らす。
しばらくの間
僕たちの居るこの空間を、さざめくような波の音だけが繋いだ。
僕は体を前に向き直し、拳を作って、やり場のない怒りを車のドアにぶつける。
それを静観している奈菜。
「寂しいからって、何をしてもいいのか?
許されるのか?
それに、僕は奈菜に寂しい思いをさせないように、出来るだけ時間を作ってきたつもりだし、会えない時には電話だって、メールだってしてきた。
それでも、まだ足りなかったと言うのか?
それじゃダメなのか?」
横目に見える奈菜は首を大きく横に振った。
「それならどうして!!」
「秀、ずっと辛そうだった……
私といてもずっと苦しそうだったんだもん」



