翌日。
学校の廊下ですれ違った奈菜は
髪をストレートに戻していて、
昨日の事など無かったように、
生徒の時の顔で挨拶をした。
昨日はあの後、
奈菜の涙が止むまで、
僕は何も言えないままに奈菜を抱きしめていた。
しばらくすると
奈菜は何度も『ごめんね』と呟いて
“今日の私、変だね”
“気にしないで”
と、不器用に微笑んだ。
……でも、それが等身の奈菜。
奈菜の辛さを、どうしてやる事も出来ない自分、
抱きしめることしか出来ない自分が歯がゆかった。
車を降りる時には、大事そうにシュウを抱えて、
“ありがとう。大切にするね”と
奈菜は頬に涙の跡を残したままでにっこりと笑った。
それが僕には痛ましかった……
すれ違った後で奈菜を振り返る僕。
奈菜は友達と合流していて
ふざけながら笑い合っていた。
離れていくその背中が、
僕たちの距離を示しているようで
妙に寂しくて、
踏み入れてはならない領域に入ってしまった僕たちをそれが諭しているように感じた。
僕は奈菜の為に何が出来るのだろう?
どうする事が奈菜にとっての幸せなんだろう。
僕は溜め息をついて、足早に職員室に向かった。



