僕の愛した生徒



僕たちはお腹を満たした後、
今度はモール内にあるゲームセンターへ入る。


そこで、奈菜はコインゲームで落ちてくるコインにはしゃいだり、

ゲームの世界で有名なあの兄弟のレースゲームをムキになってしてみたり。


その次には真剣に太鼓を叩く奈菜。
薄々は気づいていたけれど、そのリズム感のなさには僕も笑う。

それに“だって、仕方ないじゃない”と頬を膨らませる奈菜はUFOキャッチャーのコーナーへ足を向ける。


どれにするのか迷いながら歩く奈菜の足は止まり、その台を覗き込むと、僕も一緒になって覗く。

中には大きな犬のぬいぐるみ。


その犬の目がいつかの奈菜の顔を思い出さす。

何となく奈菜に似ている。


奈菜はその台にお金を投入すると
機械を操作するが…取れる気配は全くない。

何度か入れていくお金。

でも、奈菜には取れそうもなく、たまらず僕は“貸して?取ってやるから”と奈菜と場所を交代する。

そして、僕は“こうゆうのは、一回で取ろうとしてもだめだよ”と奈菜に解説をしながら操作をしていき、

それから何度目かのお金の投入で見事にそれを落とした。


それを取って、奈菜に手渡す。


奈菜は“ありがとう”と大きな笑顔を僕に向けると、それを抱きしめ、

ぬいぐるみに“今日からキミの名前はシュウだよ”と嬉しそうに話かけた。


「なんで僕の名前?」

「だって、どことなく秀に似てるんだもん」


屈託のない奈菜。


「僕には似てないよ。
どちらかと言えば奈菜に似てる」

「似てない!」


そんなやり取りをして笑いあった僕たち。



ふと僕は腕時計に目をやる。

「そろそろ、奈菜のプレゼントを買いに行こう?」

「そんなの要らないよ。
だって、ここにシュウが居るし」


当たり前のように話す奈菜は

抱いているぬいぐるみの頭を撫でながら
“今日からずっと一緒だもんね”とそれに話しかけた。


「それはそれ。
プレゼントとは別だよ」

僕がそう言うと、奈菜は少し考える素振りを見せてから

「でも、要らない。私にとってはこれで十分なの」

そう笑って僕の前を歩き始めた。