その日の夜は奈菜に電話をしても
“今、友達の家だから"と、ろくに話も出来ず、
僕は立ち込める暗雲を胸に抱え、ベッドに身を沈める。
しかし、なかなか寝付けない僕。
そんな僕を、カーテンの隙間から真ん丸い月が覗き込んでいた。
暗闇で何も言わず、ただ静かに浮かぶ月に見守られ、
僕の脳裏を駆け巡るのは奈菜のことばかり。
17歳も年の離れた高校生に完全に振り回されているな……
奈菜の言動に一喜一憂する自分が
何だか滑稽に思えて可笑しくなる。
僕は寝返りを打ち、額に手を置いて、一人苦笑いを浮かべた。
僕の彼女は17歳年下の生徒か…
僕は苦い大きな息を一つ吐く。
奈菜は高校を卒業した後、
きっと今よりも広い世界を見るんだろうな。
その時……
奈菜は僕の元を去っていくのかな?
でも
それでいいんだ…それで……
奈菜が幸せになるのなら、
僕は奈菜を縛るつもりはなから。
だから、いつかその日が来たら、
僕は奈菜の背中を見送るよ。
必要ならば僕が背中を押してあげる。
『大丈夫だよ』と……
でも、もう少しだけ…今はまだ奈菜の一番近くにいさせて?
奈菜が僕を必要としなくなるまで
僕の…僕だけの奈菜でいて?
相変わらず静かに僕を照らす月。
僕は眠りにつけないまま、
優しいその光に抱かれて、長い長い夜を越した。



