僕の愛した生徒



「実は、何がいいのか分からなくて、まだ奈菜へのプレゼントを買ってないんだ……」


忘れていないことを強調しつつ
今度は僕が奈菜の反応を見る。


奈菜は一瞬、キョトンとして、

「そんなのいいよ。
欲しい物もないし、それに、前に香水を貰ったし……」

慌てるように言って僕を見た。



香水…か……

あの香水は……



何も知らない無垢な奈菜に、
申し訳ない気持ちと苦い思いが込み上げる。



「僕が奈菜にプレゼントしたいんだよ。

それに、香水は出張のお土産だしな。

それとも、奈菜は僕からのプレゼントは受け取れない?」


僕はイタズラな笑顔を作って見せた。



きっと学生の奈菜には、
彼氏としたい事や思い描いた理想が沢山あると思う。

でも、僕はそれを何一つ叶えてやる事が出来ないし、我慢ばかりさせてしまっている。


奈菜はそれに不満を漏らしたことはないけれど、僕と同じ気持ちを抱いているのなら、


きっと……


暗い深海で、光を求めてもがくような…そんな毎日のはずだから。


だから、せめてこんな時くらいは

奈菜に彼氏らしい事をしてあげたいし、少しでも理想を実現させてあげたい。


クリスマスとゆう、恋人同士にとって大きなイベントを忘れていた僕だけど……



首を大きく横に振った奈菜は


「凄く嬉しい」

と、はみ出しそうな笑顔を僕に見せる。



その笑顔に僕は刹那の光を見る。


例え、それが泡沫(うたかた)のものであっても

……いいんだ。


奈菜がここにいるから。



それから僕たちは暖かい視聴覚室で、許される時間の中、

奈菜のプレゼントを買いに出掛ける計画を立てた。