僕の愛した生徒



しばらくして、僕たちの会話のやり取りは途切れる。


すると、奈菜は自分の鞄をゴソゴソして、シンプルにラッピングが施されている長方形の薄い箱を取り出すと

“一日遅れだけど”と、それを僕の前に差し出した。


「なに?」

僕はその意味を探るように奈菜の目を見つめる。

奈菜は“これ?”と、その箱に一旦、目を落としてから


「クリスマスプレゼント。
本当は昨日のイブに渡したかったんだけどね、学校がある日に持ってきたら秀に叱られそうだったから……」


奈菜はしおらしくそう話した後、

人差し指で目尻をつりあげて、
“余計なものを学校に持ってくる
な!とかね”と、似てない僕のモ
ノマネをして、おどけて見せた。


「全然、似てないし。
それに、そんなことじゃ怒らないよ」


呆れるように言う僕に

「知ってるよ」

と、奈菜は柔らかな笑みを浮かべ

“本当は昨日…家に忘れて来ちゃっただけ”と、恥ずかしそうに小さく笑った。




「ありがとう」

僕は箱を受け取り、早速、包みを開ける。


その中身は、淡いグレーの生地に
クリーム色と桜色でチェック柄になっているネクタイ。



奈菜は顔に期待の色を浮かべて、僕の反応を待っている。

僕はそれに応えるように、ネクタイを箱から出して首に当て
“どう?”と、奈菜に見せると

奈菜は
“たぶん似合っているけど……”と言葉を濁した。


「たぶん?」

「だって、ジャージには似合わないよ」


困惑気味に笑う奈菜につられて

僕も苦笑いをする。


そして、その後は何故か目を合わせ、声を立てて笑った。




「奈菜、本当にありがとう。
大切にするから」


僕はそう言ってネクタイを丁寧に箱に戻す。



……が、

僕は奈菜に何も用意していなかったことに気づく。

それどころか、クリスマスとゆうイベント自体もすっかり忘れていた僕。


考えてみれば、夕べの飲み会の出席率が低かったのも、

平日の夜にもかかわらず、
街にカップルが溢れていたのも、

街中がイルミネーションだらけなのも


クリスマスだったからなのか……



奈菜にどう誤魔化すかな?