僕の愛した生徒



僕は奈菜の視線をかわすように、直ぐに向き直り職員室に入る。


入ったそこはガランとしていて、ほとんどが空席状態。

出勤している先生は少なく、
壁に掛けてある、先生方の名前が書かれたプレートはひっくり返され、色が付いている方が表になって並んでいた。


色が付いているとゆうことは、
学校に来ないことを示している。


浅野先生の名前のプレートもちゃっかりとひっくり返っていた。



さすがは浅野先生。

三次会まで張り切っていただけあって抜かりない。



僕が密かに苦笑いを浮かべていると、朝礼が始まる。

とはいえ、少人数でのそれは
あっという間に終わり、
先生方はそれぞれに散らばっていった。



僕は視聴覚室に向かい、
そこで形だけの教材研究をする。

でも、体調が優れない上、
さっきの奈菜との事もあり
やる気がおきない。


僕は溜め息をつき、窓の側まで歩くとカーテンを開けて外を眺めた。


僕の目は直ぐに奈菜を捉え、
視線はその姿を追いかける。


両手をメガホンの代わりにして
何かを叫んでいる奈菜。


相変わらず一生懸命な奈菜の姿が
僕の中に再び迷いを呼び覚ます。


「僕たちはこのままで居ても
いいのかな?

奈菜はどう思う?」


僕は窓の桟(さん)に頬杖をついて、グランドの奈菜に向かって呟いてみる。


『いいに決まってるでしょ?』

得意気にそう言って、屈託なく笑う奈菜が脳裏に浮かぶ。


でも、その次の瞬間には

『先生だけでいて下さい』

と、あの日、僕に頭を下げた藤岡さんの姿が蘇って奈菜の笑顔を打ち消した。



僕は両手で顔を覆い、大きく息を吐く。


そして
手を外し、再び奈菜を探すと、

見つけた奈菜は、グランドから
僕がいるこの場所を、佇むように見上げていた。