翌朝。
二日酔い気味の僕は、気分が優れないままに、ゆっくりとベッドから体を起こすと、
浴室へ向かい、そこで熱いシャワーを浴びて出勤の支度を始める。
昨日の忘年会は、結局、三次会まで付き合わされ、帰宅は平日にも関わらず午前3時。
誘いを断れるような僕じゃない。
こんなことになるならば、年休をとっておけば良かったな……
僕はそんな後悔をしながら、
スーツではなくジャージに着替え
昨日の帰りにコンビニで買っておいた栄養ドリンクを、冷蔵庫から取り出し一気に飲み干すと、家を後にした。
到着した学校。
冬休みに入った学校は
いつものような賑やかさはなく、
自分の足音とナイロンジャージが擦れる音が響く程に、ひっそりとしていて、空気も冷たい。
職員室まで続く廊下を歩いていると、補習や部活で登校している生徒数人とすれ違う。
“おはよう”と挨拶を交わす度、
吐く息は白く輝き、煙のように消えていった。
僕の目が、数メートル先の曲がり角に立っている、ジャージ姿の奈菜を捉えると、
僕に気付いていたらしい奈菜は、胸の前で小さく手を振り笑顔を向けていた。
僕はそこへ足早に近づき
“おはよう”
と、声をかけようとするが、
僕よりも先に、奈菜の前には秋山が立った。
突然の秋山の出現に、
思わず“おはよう”の言葉を喉の奥に留めた僕。
行き場を失ったこの一言は、
大きな溜め息へと変わった。
僕は秋山が奈菜に話しかける様子を横目に素っ気なく通り過ぎる。
奈菜といやに馴れ馴れしく挨拶する秋山の態度がしゃくに障るし、
それに笑顔で応じる奈菜にも苛立ちを覚えた。
奈菜も秋山を上手くかわせよ!
後ろから
“先生、おはよう”と元気な秋山の声が聞こえてくるが、
僕はそれに振り返ることもせずに歩き、
職員室の前に来て、一度だけ
そっと奈菜を振り返る。
すると
奈菜もまた、僕を振り返り
気まずい表情を浮かべていた。



