僕の愛した生徒



僕は膝の上に座る奈菜を後ろから
抱きしめたまま、奈菜の肩に顎を
乗せると頬を耳にピトッとつけ、

奈菜は回されている僕の腕を優しく掴んだ。



暖房の運転する音だけが微かに響き
そして、その音は一定の間隔で変わっていく。


その音を聞きながら、

僕たちは何かを話すわけではなく

何かをするわけでもない。


でも

こうしているだけで、今の僕には十分で

言葉さえ要らないと感じるほどに
全身は満たされ

全てが


ただ…ただ、愛おしい……



奈菜はどう?

僕の全部が届いている?



僅かな隙間から入り込む、沈みゆく太陽の柔らかい日差しに包まれながら、

僕たちは互いの鼓動だけを確かめ合っていた。




いつの間にか光を無くしていた部屋の中。


奈菜が

「そろそろ帰らなきゃ」

と不意に僕の膝から立ち上がる。



奈菜に触れていた体の部分が急にひんやりとして、

僕の中から奈菜の体温が奪われていく。


それに

過ぎ去る一瞬の重みを改めて知り
この瞬間を終えることに心がひかれる。


でも、僕たちには戻らなければならない場所があるんだ……



「そうだな」

僕も椅子から立ち上がると、
部屋の電気を点け、


コートに手をかけようとする奈菜を見つめると

ふと奈菜の足に目を留めた。