「藤岡さんのお気持ちは良く分かります。
私も奈菜さんの将来については、奈菜さんの意志を尊重していくつもりですし、
出来るだけサポートをしていきたいと考えています」
「そうですか。
それは心強いですが……
もし先生の存在が、
奈菜の将来の妨げになるかも知れないとしたら
どうでしょう?」
僕が奈菜の将来の…妨げ?
「先生もご存知だと思いますが、世間の目はずっと厳しい。
あなたは“先生"とゆう立場の方ですから、もし、奈菜との事が噂にでもなれば…」
「分かってます。
もし何かあれば…」
「何かがあってからでは遅いんです!」
僕が続ける筈だった
『僕が奈菜さんを全力で守ります』
とゆう言葉は、少し荒げた藤岡さんの声に遮られた。
「先生、率直に申し上げます。
もし本当に奈菜の事を大切に思って下さるのであれば、
今は別れて貰えませんか?」
淡々と冷静に話す藤岡さんのストレートな言葉は僕を凍りつかせた。
僕が事務室から奈菜のお母さんが訪ねて来られたと連絡を受けた時から予感はしていた。
とはいえ、直接耳にする言葉は僕を暗闇へと突き落とす。
藤岡さんの言葉が僕の頭の中をこだました。
「…藤岡さん……」
「先生の気持ちは奈菜の母として嬉しいですし、奈菜の想いも同じ女性として分かります。
でも、奈菜が卒業するまで待って頂けませんか?
それで、もし奈菜が卒業した後、それでもお互いの気持ちが変わらないのであれば、
その時はもう何も言うことはありません。
ただ、今は…
今は奈菜の“先生"だけでいて下さい」
藤岡さんは頭を下げたまま、
絞り出すような震える声で
“お願いします"と付け加えた。
その姿に感じた親心。
奈菜への無償の愛。
奈菜があんなにも真っ直ぐで、素直に育った理由が分かる。
その愛のもとで、大切に守られてきたんだ。
奈菜のお母さんの気持ちが痛いほどに伝わる。
けれど、僕は直ぐに返事をする事なんて出来なかった。



