僕の愛した生徒



放課後

部活にも出ず、職員室で仕事をしていた僕。

すると、事務室から僕に内線が掛かってきた。


『小野先生に会いたいとおっしゃって見えてる方がいらっしゃるんですが…』


僕は“分かりました"と返事をして、

急いで必要な資料に目を通して
玄関に向かう。


そこで、僕を待っていた、小柄で上品なその女性に丁寧な挨拶をして応接室に案内した。



そこに入ると、僕はその女性に椅子を勧め、

その女性が腰をかけるのと同時に僕も対面の椅子に腰を下ろした。



「娘がいつもお世話になっております」

「こちらこそお世話になります」


僕は動揺を見透かされないように目の前の女性にお決まりの挨拶をして、改めてその女性を見る。


長い睫に大きな目。
優しそうな口元が奈菜に似ている。

いや…奈菜が似ているのか。



「お忙しい中、突然お伺いしまして申し訳ありません。

今日は娘の奈菜の事で、ご相談がありまして……」



“奈菜"とゆう単語に思わず顔を強張せる僕を、奈菜のお母さんは固い表情で真剣に見つめている。


「そうでしたか。

どのような事でしょう?

奈菜さんは生活態度も申し分ありませんし、成績の方も特に気にされるようなことはないと思いますが……」


僕がそう話すと、奈菜のお母さんはフッと口元を緩め、


「そうですね。
先生のお陰でしょうか?

奈菜は学校以外のところでも
小野先生にはお世話になっているようですし」


そう言って

目を見開いた僕を確信の目で見据えた。