僕の愛した生徒



僕は考えるように、ゆっくりと言葉を選びながら

一番輝く星だけを見つめ、

奈菜に、玲香とのあいだにあったことを話した。


僕と玲香が積み重ねた時間や、
結婚を意識していたこと。

一度目は浮気を許したが、二度目は許せず、それが原因で別れに至ったこと。



僕は全てを話し終えると、見上げていた夜空から奈菜に目を移した。


すると、涙を流していた奈菜。


「なんで奈菜が泣くんだ?」


僕は苦笑いを浮かべ、奈菜の頬をそっと包むように手を当てると、親指でその涙を拭った。


「だって……

秀はその人のこと、すごく大好きだったんだよね。
それなのに…辛かったよね。
悲しかったよね」


奈菜は潤んだ瞳で僕を見つめた。



確かに、ずっと辛くて、やりきれない気持ちは大きくて、
玲香と別れた後は、後悔だけの日々だった。

もう時間を戻せないことも知っていながら、それでも悔やむばかり。


“どうしてあの時、玲香を許してやれなかったのだろう"

“僕が許してさえいれば、
ずっと玲香と一緒に居られたはずなのに"

……と。



でも、今は……


「初めはな。
でも、今は奈菜が居る」


そう言って僕が奈菜を包み込むと
奈菜は僕の腕の中で顔を上げ、潤んだ瞳のままで僕を見る。


「私が?」


奈菜は呟いた。


「そうだよ」



セピア色だった僕の世界に、奈菜が原色をくれたんだよ。



「ねぇ、秀は……」


消えてしまいそうに吐き出された奈菜の言葉は止まり、

僕が“なに?"と尋ねると、奈菜は首を小さく横に振った。



「秀。私は何があっても、
どんなに寂しくたって、
他の人のところなんかに行かないよ。

秀だけ…私には秀だけだよ。
変わりなんていないんだから」



奈菜の目からは再び涙が溢れ、

僕の腕には力がこもる。


「あぁ、わかってる」



僕も奈菜だけだよ……