「悪いけど……
浮気も許すつもりはないよ。
一度目は許したけど、さすがに二度目はないだろ?
僕が玲香に寂しい思いをさせてしまった事は申し訳ないと思う。
でも、寂しいからって何をしてもいいのか?」
淡々と話す僕に、再び目にハンカチを当てた玲香は、ただ首を横に振るだけ。
「もう、無理だ。
玲香を信じられない」
「お願いだからそんな事いわないで。
私、これからちゃんと信じてもらえるように努力する。
何でもする。
寂しいなんて言わない。
だから……」
今度は僕がゆっくり首を横に振る。
その後も玲香は泣きながら、
縋(すが)るように何度となく謝り
僕の許しを請うように、いろいろな言葉を並べた。
でも、僕の心は決まっている。
『別れよう』
この言葉に玲香は泣き崩れた。
僕はその姿を直視できなくて、
ソファーを立ち、寝室へ向かう。
そして、ベッドに腰を下ろし、リビングから聞こえてくる玲香の泣き声に僕は耳を塞いだ。
そして
どの位の時間が過ぎたのだろう?
僕はベッドを静かに立ち上がると玲香の気配が無くなったリビングに入った。
そこで、ソファーに腰を落とすと
まだ、微かに残っていた玲香の温度。
僕は目を閉じてそれを感じる。
この温もりが消えない事を願ながら。
でも、この温度を感じることは
もう二度とないんだな。
これが最後……
一筋の涙が頬を伝って落ちた。
そして一年前。
玲香が結婚したと
風の便りに聞いた。



