こんなに自転車をこいだのは初めてだった

一般の人に比べれば普段の自転車通学で足の筋力は付いてる方だと思うし、

自転車に乗って疲れる事はなかったのに


サイクリングロードは本来楽しむものなんだと思う

日頃の運動不足を解消したり、家族で遊びに来たり

だけど俺はどうしても今日、オレンジロードに行かなければならなかった


彼女との限られた時間を無駄にしたくない



『ねぇ、もし頂上まで行けたら小さな悩みもどうでも良くなるだろうね』

彼女がポツリと呟いた


頂上の景色がどんなものなのかは分からない

でも彼女と見る景色は絶景に決まってる


彼女は俺の腰に手を回し、額を背中にくっつけた


『約束しよう。私達は変わらないって。いつまでも前を向いて生きていくって』

俺は左手で彼女の手を握った



『約束するよ、絶対約束する』


灰色のコンクリートの道をどれくらい進んだだろう?


周りの景色は森林ばかりで代わり映えがなく、進んだ変化が分からない

だけど空を見たら若干青空が薄くなっていた


ゴールが見えない道のりに、何度もペダルをこぐのを止めようかと思った


でも背中に感じる温もりが俺を前へ、ひたすら前へ進ませた


足の感覚がなく、太ももはパンパンになっている

汗でTシャツが濡れ、息もかなり上がっていた