『ねぇ、風が冷たくて気持ちね』

風を顔いっぱいに感じて彼女は言う


俺はそれをチラッと確認して、彼女を外に出してあげられた事を本当に嬉しく思った

俺の住んでいる町を当てもなくブラブラしていると

『あら、幸汰君』

あの日のように声が聞こえた


それは間違いなくチヨばあちゃん

就職先が決まったのはこのばあちゃんのおかげ


『お散歩かい?今日は天気がいいからね』

俺は空を見上げ、天気の良さを改めて感じた


俺はチヨばあちゃんに就職のお礼を言って、自転車のペダルに足をかけた


『彼女といつまでも仲良くね』

ばあちゃんが別れ際ニコリと言った



『幸汰はこの町で育ったからこんなに優しい人になったんだね』

彼女が後ろでそんな事を言った

それを聞いて、そんな風に思える彼女の方が誰よりも優しい人なんだと思った


俺が優しい人間かは分からないけど、

真っ直ぐ成長出来たのは彼女の言う通りこの町で育ったおかげ


俺はこの町で生まれ、この町で育ち、この町で彼女と出会った

そんな町を俺は心から好きだと言える


次に向かったのは小さな駄菓子屋

そう、二人でアイスを食べた思い出の場所