チャイムが鳴り、英語の授業が終わった。
先生が出て行くと、佐紀は机の中から、
一冊の文庫本を取り出した。
その本を読んでいると、珍しく祐太が、
声をかけて来た。
「なに、読んでんだ?」
佐紀は、本に目を落としたまま、答えた。
「”ねらわれた学園”」
「おっ、眉村卓か」
それを聞いて、佐紀は、祐太を見た。
「へー、眉村卓、知ってんだ」
「俺も結構、SF、好きだからな。
でも、ちょっと、古くね」
「うん、お父さんが、持ってた。
お父さん、自称、文学青年なんだ」
「俺も、名前は知ってるけど、
読んだことは無いなあ。
俺は、短編専門」
「どんなの、読んでるの?」
「大体、推理小説か、SFだな。
純文学なんか、かったるくて」
「私もぉ。
やっぱ、面白い方がいいよね」
「てか、お前、文学少女なんて、
意外だな。
単なるバスケ馬鹿だと思ってたのに」
「バカとは何よ、馬鹿とは。
これ、中学の時のコーチに、
言われたんだ。
バスケが上手くなりたきゃ、
本を読めって」
「何だい、それ」
「イメージトレーニングの練習だって」
「へー、そんなんで、練習になるのか」
「らしいよ、たぶん」
休み時間、終わりのチャイムが鳴った。
祐太が突然立ち上がり、また、座った。
「あー、しまった。
俺、トイレ、行こうと思ってたのに」
それを聞いて佐紀は、微笑みながら、
本を机の中にしまった。

