『ハァ、ハァ、ハァ…』

灑梛は日が傾きかけ、薄暗くなってきた廊下を、ひたすら走っていた。

現在、灑梛は13歳。
すでに家業である暗殺に携わり、数々の功績を瑞希と共に成し遂げた。

『ハァ、ハァ、ハァ…』

これで何回目だろう。
同じ作りの廊下を走り、階段を降り、また走る。

なぜ、走っているのか?
それは…

「待って、靈羅さん!!」

先程からしつこく追いかけてくるクラスメイト…
アリサワ ヒロキ
有沢 寛貴
のせいだった。

『チッ…まじウゼェ』

苛立ちのためか、低く呟き、階段の手摺を飛び越えて下へ降りる。
本当はもっと速く走れるのだが、そこはそれ、凡人で暮らしているので目立ちたくない。
いや…
あまりの美貌と秀才さで、ずいぶん目立っているのだが。