* * *

 

「あ、遠藤、おかえり。
なあなあ、飯どーする? 一応な、俺、コンビニでお惣菜は買って来たんだけど。メシも炊いておいたぞ」
 
 

仕事から帰宅。
 
リビングに入ると優しい奥さんがメシを作って…、くれているわけもなく、年齢詐欺をしている15の親友がイソイソと台所を動き回っていた。


虚しいねぇ、この光景。


自分から望んだバツイチだとはいえ、やっぱあったかい飯は女に作ってもらいたいもんだ。

いや夕飯を作ってくれているだけ贅沢は言わないけどさ。

「俺も惣菜は買ってきた」

スーパーで買ってきたメシを見せれば、

「んじゃ夕飯の用意すっから」

惣菜を皿に並べてラップを掛け始める。レンジで温めてくれるらしい。

ご丁寧な親切心だこと。
 

いつも散らかっているリビングがやけに綺麗なのは、坂本が泊まりに来ているからだろう。

俺が仕事で留守している間、何かに役立とうとした結果がこれだ。

俺じゃあ掃除なんてろくすっぽうしねぇからな。

スーツから家着に着替えてテーブルに着くと、「あいよ」頼みもせず冷蔵庫から缶ビールを取り出してきてくる。


まったくデキた居候さんだ。


気分的にはシングルファザーだぜ。

親父帰宅。
息子出迎え。

パパ、今日も一日お疲れさん。

おう、今日もパパは一日頑張ったぜ、みたいな?


……阿呆か、俺は。