「アンタは知ってたん?
染五郎さんと…
のり姉が付き合ってんの」



弟なんだから、
そりゃ知ってるよな。



もしかして、
知ってて…
『協力する』なんて言ってたんかな。




「………。」



妖精は目を逸らした。
やっぱり、知ってたんか。




「あのさ、
ヒカル……」



そこまで言って、
私の言葉は詰まった。



妖精が、
辛そうな顔をしてたから。

『好きになってはいけない人なんているのかな』



―――この台詞は、
好きになってはいけない人を、
好きになってしまったから言ったのだとしたら…



もしかしたら…




「アンタ、
もしかして…

のり姉が好きなん?」



私がそう言うと、
妖精は顔を真っ赤にさせた。




………図星だ。




「好きになったらアカンって…
兄貴の彼女やから?」




妖精は、
微かに頷く。



イルカショーが始まり、
自販機の場所からでも少しだけ見えていた。




二匹のイルカがキスをして、
ハートマークを作っていた。



二匹のイルカを、
私と妖精は静かに見ていた。