ペテン師の恋

私はママの合鍵でマンションの中へ入り、部屋へ向かう。




インターフォンを鳴らし、鍵が空く音がすると、私は勝手に中へ入った。




「早かったじゃない。私はまだメイクも出来てないのに」



私はいつものように広いソファーの真ん中に座った。



「そう?これでも寄り道してきたのよ?」




私は朱一の小説を読み始めた。




「あら、珍しい~。あんたが小説を読むなんて」




ママは私にお茶を出し、一人掛けのソファーに腰かけた。



「これ?昨日、助けてくれた人が小説家だったのよ」



「えっ!?誰々?」




ママは私の横にきて、私から本を取り上げた。




「桐崎朱一…あのイケメン作家じゃない!?本当に?」



ママは昔から彼の小説のファンらしい。



頼んでもないのに、彼の作品を持ってきてくれた。




「まだ小説家になって間もないから4冊しかないけどね」




「そうなんだ。今日お店に来るみたいよ。助けてくれたお礼だから無料にしてあげてね」



私は、ママとは正反対に冷静に言った。