ペテン師の恋

私は、目を瞑った。








無音の中、朱一はまだ傍にいてくれる。








誰も、強くないし、独りでは歩けなくなることもある。








そして、手離してあげることも必要なのだ。








私が中心で、世界が廻っているわけではない。








朱一にも、朱一の世界がある。








彼が決めた道を、私が邪魔してはいけない。私は、彼の帰りを待つしかないんだから。








「…何年経っても、待ってるから…」








私は、小さな声で呟いた。








「待ってるから…帰ってきてよ…」








私は、布団に潜り、背をむけたままこらえ切れない涙をなるべくバレないように流した。








泣いてばかりじゃ、ダメだから、もう、見せたくない。








「朱美…」








朱一は、決意したようにベッドからでて、服に着替えた。