ペテン師の恋

それでも、朱一は無理矢理私の顎を掴み、目線を合わせた。








私は抵抗して、責めて、目を閉じた。そしたら、見なくてすむ。








「もう、俺の顔なんてみたくないか?」








寂しそうな声、私は恐る恐る目を開いた。








そして、朱一の顔をみる。








そこには、とても悲しそうな、寂しげな表情をした朱一の顔があった。








「朱一…」








悲し気な表情のまま、無理に笑みを見せた。








「あのときの俺は、狂っていたんだ。金持ちで生まれて、突然、父親が他の女と結婚するとか言い出してさ…捨てられた俺らは、初めて苦労を体験したよ。まあ、母親は外人だし、初めから苦労は体験してるだろうけどね…」









朱一は静かに語り始めた。









私が母の幸せを願い、誰かが不幸になるなんて、幼い私にはわからなかった。