「朱美さん、二番テーブルへお願いします」



黒服をきた男の子が私を呼びにくる。



私は、話していた相手に笑みを見せ、軽く肩に手をのせた。



「ごめんなさい、呼ばれちゃったからちょっと待っててね」



男は中年太りで、指には自分は金持ちだと言わんばかりの派手な指輪をしている。



「もういっちゃうのか?寂しいじゃないか」



男は肩にのっている私の手を撫でる。



不快に思いながらも、私は笑みを絶やさず、男の手を握り返した。



「すぐ戻るから」



男は私の笑顔と言葉を信じ、満足そうに笑みを浮かべて手をゆっくり離す。



私はみんなの視線を意識するように優雅に次のテーブルへ向かう。