ペテン師の恋

すると、今度は私に視線を移す。



「ママは店に戻って」



私はママを庇うように前に出た。



「何いってるの!?あんたが…」



山田は私に手を差しのべるように手を伸ばしながら「朱美ちゃん…」と何度も呟きながら近づいてきた。



私は恐怖に耐えながらもママを店に押し込んだ。



「山田さん、どうしたの?なんか…いつもと違うよ…?」



私はなんとか彼に話しかけてみた。しかし、彼には私の声は届いていないらしい。



これ以上は無理だと思い、私は走りだした。



同時に山田も走り、運悪く私は山田に腕を掴えられてしまった。



「イヤー!!離して!!」



必死に私は腕をほどこうとしたが、さすがに男の力にはかなわなかった。



私はもうダメだと思い、目を閉じた瞬間



「ドカッ」と人を殴る鈍い音が聞こえ、同時に私の腕は解放され、反動で地面に倒れてしまった。