入場する花嫁。彼女は美しい。
それを待つ花婿もまた……。
ぐっと、ジュリアは唇をかみしめる。じんわりと口の中に鉄の味が広がる。
もう、どうにでもなってしまえ。
もう、どうでもいい。
諦めなくてはならないのだ。
彼は結婚する。平和のために、国の為に。
「………」
誰もが祝福する結婚式。
ジュリアは淡々とその儀式を見ていた。ほほ笑むこともなくこともできない。
ただ、見ているだけ。見て、拍手をして、それだけ。
式の最中にちらりと目が合うのがたまらなく嫌になる。
「バカ……」
口の中でぼそりと呟く。
届かない。
届いてほしくない。
自分は見届けなくてはならない。長年仕えてきた主人の結婚式を、使用人として。
それが何よりも悔しくてしかたがない。
使用人の自分が憎い。
「新郎アスラン、貴方はこの妻、アンジェラを……」
結婚を誓う言葉。
聞きたくない。
聞きたくない。
聞きたくないッ!
何度も心の中で叫ぶ。
でも、届かない。
届くわけがない。
「誓いますか?」
神父の問いかけ。
アスランはためらうように唇を噛み、そして答えた。
「誓えません」


