その日も執務室でいつものように書類に目を通し、ペンを走らせていた。

だから、部下が少しだけ目を離したすきにジャンは執務室から抜け出した。


とても天気がよくて、執務室に籠もって仕事をする気になれなかったから。




「ふぅ。気持ちいい」

自然と顔から笑みがこぼれる。久しぶりの外だ。
ここのところ、仕事が山積みで執務室に縛りつけられていた。


少しだけ歩いて、本部の敷地内に一本だけ植えた木の前に立つ。


その木の下はジャンのお気に入りの場所。

木を眺めてから、目を閉じて深呼吸をした。