夜も更けた頃、オリビアは、店へと続く階段を下りる。
もう、客も引く頃だし、片付けを手伝うつもりだった。

なにしろ、この古びた店を、あの老人は、一人できりもりしている。

数人、バーテンを雇いはしているが、片付けるという行為は、何かと徒労するものだから。

「ジャン。店は閉めた?」

古い調度品の陰から、
声をかける。

「ああ。終わったよ。
オリビア。寝付けないのかい?」

老人は笑みを浮かべて、
彼女に視線を送る。

「いいえ。手伝うわ。」

オリビアも、彼の笑みに 笑顔を返し、スルッと家具の陰から身を現す。


舞の衣装から一転し、若干厚みのある、襟ぐりの大きく開いた五分袖の上着と、揃いの黒の下肢ばきといった姿で、閉店作業を手伝いはじめた。


老人は、ふっと思い出したように、オリビアに向かい、話かける。

「そういえば、今夜、数刻ほどだが・・・
若い二人連れ、おまえさんの舞を見て帰ったよ。」

「へぇ。」

グラスをカウンター越しの、水場へ運びながら、彼女は相槌をうつ。