かつては、オリビアも団体に加わり、諸国を巡ったものだが、現在は、気ままに独りで行動している。

彼女の様に、独りで回遊している者も結構人数がいて、こうして、集落に戻ってきては、体を休め、技を磨き、次の旅にでる。

昼間の太陽を避け、岩影で精進するものが多いが、風の無い日や、早朝には、居住区の頂きの岩場で稽古をする。

彼女は、さらに巨岩群から、数刻離れた石舞台で練習するのがお気に入りだ。


今も、足元からは、楽師たちの弦楽の音色が聞こえてくる。

この、赤い岩場に太古からの音が浸みていて、それが涌き出しているように錯覚してしまう。


やがて、演奏は
覚えのあるものに変わり
彼女は、ある男を連想し
ため息を零した。


息苦しさに、空をみあげる。


どこまでも続く青い空が
なにもなかったかのように
ただ、ひろがっていた。