ヴォルハムンへ戻り、
数日が経過したある日。


「オリビア。居るか?」
耳慣れた声がする。

「いるわ。すぐに行く!」
彼女は応えながら、腰に届く黒髪を、脳天で一つに束ねて、衣服の乱れを整える。

毛織物で作られた、住居の扉をめくり、先ほどの声の主の方へ歩み行く。


大きな岩盤にある、この居住区からは、遠くの景色もよく見渡せる。

遠くに、風城へ神楽を奉納するため、旅にでたキャラバンがみえる。

この巨岩群の足元には、
第ニ班の、風城行きの楽師達が、最後の荷物の点検する姿が見える。

「風城班が、出発するようね。」

オリビアが、男の背に向かい声をかけた。


「ああ。明日には、地宮班が出発する予定だ。」

彼は、オリビアのほうをむいて言う。

「オリビア、この間の話だが・・・。」

「ああ・・・。」

サハールを出発した日の件だ・・・。
帰ってきて、報告したからね。

思い当たる事があり、
彼女は小さく頷いた。

「昨夜中に、ガイとレツをサハールにやった。
恐らく十日ほどで戻ってくるだろう。」