テラスへの階段を昇る女が言葉を紡ぐ。

「今宵は、ディック=モンロー様と、お出かけでいらしたのですね。」

「ああ。見つかっていたのか。」

テラスにもたれ立つ時分の横にたち、彼女は、他言せぬので心配不要と解く。

なかなか、気が利く。

「ところで、どちらへお行きになったのです?」

珊瑚色の唇が言葉を紡ぐ。

「宿場街だ。」

「まあ!!
その様な危険な場所へ!!
覇王!貴公の事です、サハールのほうへ、お行きになったのでしょう!」

「あたり。」
「呆れてモノが言えませんわ!失礼!」

女は、顔を真っ赤に染め
怒りを現にし、退室した。

『サハール』といえば、
公には、禁止しているが、
色街としても有名だ。

そちらと、イコールで結び付いたのだろう。
安くみられたものだ。
苦笑する。

これでも、自分の立場は
わきまえている。

いつものパターンから、彼女の行動を予測すれば、そのような、乱れた風紀の街へいったことを説教しに、側近でもあるディックの所におしかけるんだろう。

階下の部屋の奴を暗号で呼ぶ。