国境最寄りの宿場街
『サハール』

オリビアを、見かけた街の名前だ。

そこより、徒歩であれば、半日ほどかかる距離に位置する所に、水宮宮殿はある。

砂漠より随分と離れ、高度もあるここは、水脈が豊かな所だ。

水源を祭る神殿から、溢れた水流は、宮殿の中を通り、水路を伝い、国内に豊富な水を供給していた。

宮殿に水路をとる姿などは、水のヴェールに大理石の建物が覆われている様で、内側から見ても、外側から見ても、何とも言えず美しかった。


街中が夜に覆われる今の刻は、
ここは見えないが、
ここから、市街はよく見渡せる。

宿場街の薄明かりが、
かすかに夜の闇に浮き上がり、幻想的な風景を演出する。

更に、冷涼な風が、砂漠からの砂を運ぶためか、光を帯、薄い煙幕に覆われた様にも見える。

ヴァイスは、テラスに腰掛け、先刻まで居た街の方角を眺めていた。



「覇王。夜風にあたりすぎては、風邪をお召しになりますよ。」

私室の入口より、美しいふんわりとした金髪の女性が静かに入室してくる。