しかし―――――


「なら何故泣いているんだ?」

「え……?」


ラファエルの長い指が頬を伝っていた涙をぬぐう。

そこでやっと自分が涙を流しているのが分かった。

けれど、この涙の原因はいつもの夢じゃない。





「城下で何かあったのか?」


少し表情を硬くし、そう言うラファエル。




その問いに、ラナの姿が鮮明に思い出される。

短く切りそろえられた金髪と太陽のような笑顔。

無性に天界が恋しくなった。





「天界に…帰りたい……」


ラファエルの問いに答えることなく、一筋流れた涙とともにそう言う。

すると、ラファエルは一瞬瞳を見開くが、眉を寄せて何かに耐える様な表情をする。




「それは……できない。天界へ帰せば君はもうここへは戻ってこないだろう?」

「ッ…………」


ラファエルの言葉に何も答えずに目を伏せた。




「はい」と答えれば帰してくれないし。

「いいえ」と答えれば自分の気持ちに嘘をつくことになる。



何と答えていいか分からなかった……