すると―――――
「分かった!じゃぁイヴお姉ちゃんはフェンリルに乗って。僕は飛んでいくから。」
「ありがとう。」
ルルの無邪気な笑顔にほっと安堵する。
「けど、フェンリルがよく乗せてくれたね。ルーカスの話じゃ魔王様しか乗せないって聞いたけど。」
かがんだフェンリルの背に乗る私を見て、ルルが不思議そうにそう言う。
「イヴは俺と違って悪魔貴族の中でも高貴な身分だからな。」
だんだん板についてきたルーカスの嘘に「そっかー」と言いながら目を輝かせるルル。
「ほら、さっさと行くぞ。イヴは夕刻までには城に戻らないといけないんだ。」
「お仕事があるからだよね!分かってる。」
夕刻までのタイムリミットの理由も聞かず、僕に任せて!とばかりに胸を張り飛び立つ。
その小さな背にふふっと笑みがこぼれる。
こんな可愛い悪魔もいるのね。
雰囲気に和みつつも、心の中は複雑だった。
今まで散々、悪魔のことを敵だと教え込まれてきたけれど。
ルーカスやルル、そしてラファエル様が心の底から悪い悪魔だとは思えないの……
そして時折見せる憂いを帯びた表情。
悪魔と天使の間には何か深い因縁があるように思えた。
「イヴお姉ちゃん、どうしたの?ぼーっとして。」
「ううん、なんでもないわ。行きましょう。」
心配そうに飛んできたルルに笑って答えて、城下へと降りて行った。

