「あっあぁ…コイツは城で働いてる侍女でイヴってんだ。城下へ来たことがないっていうから連れてきた。」
突然話題を変えられたルーカスは、とっさに私を“侍女”と偽った。
天使だということを隠すためだろう。
「イリスとリリスの他に侍女がいたなんて初耳。イヴお姉ちゃん、よろしくね!僕はルル。ルーカスの友達だよ。」
「よろしくお願いします。」
双子の侍女の名前だろうか、“イリスとリリス”の名を上げて疑問を持ったものの、ルーカスの言うことを信じてくれたみたいだ。
トコトコとこちらにやってきて、差し出された小さな手を取る。
「一度も城下へ来たことないとなると、イヴお姉ちゃんは貴族の子なの?…あれ、でも貴族が侍女?」
ギクッ……―――――
そう言えば、上は魔王であるラファエルと貴族の居住区。
侍女は当然城下の出だろうし。
かといって、アメリアのようなプライドの高い貴族が侍女になるとは思えない。
そもそも貴族の女性は侍女じゃなくラファエル様の妃になりたいだろうから。
痛いところをついてきた少年に、どう言い訳をしてよいのか考えていると、ルーカスが焦ったように口を開いた。
「イ、イヴは貴族だけどルシファー様の下で働きたくて侍女に志願したんだ!そうだろ?イヴ。」
「え、ええ。そうなの。」
なんだか苦しい言い訳だと思いながらも、ここはルーカスの話に乗るのが無難だと思い頷く。
「ルシファー様が熱心に働くイヴを見て、息抜きに城下へ連れて行けとおっしゃったから連れてきたってわけ。」
ははは…と、ルーカスも苦しい言い訳だと感じているのか、乾いた笑みが浮かぶ。
じーっと見つめるエメラルドグリーンの瞳。
ドキッドキッと心臓が早鐘を打つ。

