「ル、ルーカス…大丈夫?」
二枚羽の小さな悪魔に抱きつかれ、下敷きになったルーカスにおろおろとしながら呼びかける。
すると、少年を上に乗せたままルーカスがゆっくりと起きる。
「いてて…どいつもこいつも驚かせんなよなッ!」
「ごめんごめん、ルーカスが上から降りてくるのを見つけたから急いで来たんだ。」
怒鳴るルーカスだが、怒られているはずの少年は悪びれたそぶりもない。
「それにしても久しぶりだね。ルーカスが城下に降りてくるのはいつ以来だろ?ルシファー様が魔王につかれてから全然城下に降りてきてくれないんだもん。」
ぷくーっと両頬を膨らませる少年。
「当たり前だろ!俺はルシファー様の側近だからな。」
「えーけちっ!僕だって寂しかったんだから!たまには帰ってきて遊んでよ。」
だんだんと語尾が小さくなりうつむく。
小さな肩が僅かに震えているようにも見える。
それにギョッとしたのはルーカスで…
「しょ、しょーがねぇだろ。帰る暇がないんだ。」
少年の様子が気になりつつも、早々に折れるわけにはいかないと思ったルーカスが焦りつつも言い訳をする。
すると少年は、下を向いたまま口を開く。
「じゃぁ1か月に1回…ううん、1週間に1回は帰ってきてよ。」
幼い子供が父親に、この場合兄と言った方が良いのか。
ルーカスは孤児のため、血のつながりはないのだろうが、少年は家族に甘えるようにそう言った。

