「今更気づいたのかよ。」
呆れ顔のルーカス。
怖くてそれどころじゃなかったの!とは言えなかった。
「一日中夜が支配しているのは城と悪魔貴族の屋敷の一帯だけだ。城下には天界や人間界のように昼も来る。“もう一つの魔界”ってとこだな。」
「何故あそこだけ一日中…?」
振り返り、はるか上空の宙に浮いた城を見上げる。
「あれはルシファー様があの一帯に“闇”を封じこめたからだ。あそこにはこの魔界の悲しみや怒りが詰まった場所なんだ……」
ルーカスの視線の先に目をやる。
闇が滝のように零れ落ちる様はまるで真っ黒なカーテンのよう。
絶え間なく降り注ぐそれは、封じ込めきれないものが溢れ出ているようだった。
それを見つめるルーカスの瞳は憂いを帯びる。
その瞳がとても悲しそうで、思わず口を開いたとき。
「ルー…「ルーカスッ!」
突如後ろから高い声が聞こえたかと思うと目の前を横切る何か。
「は……っおぁッ!?」
瞬時に振り返ったルーカスだったが、勢いよく飛び込んできたソレを受け止めきれず派手に転げて行った。
砂埃が立つ中、地面に転がる二人の悪魔。

