ちらりと見た下に激しく後悔した。
宙に浮いたこの島からとめどなくあふれる黒い“闇”
滝のように流れ落ちるその先はどこまでも深かった。
この絶壁を落下に近い速度で落ちるルーカス。
「フェンリルッ!お願い…ゆっくり降りてッ……」
思わず声が上ずり、フェンリルの毛にうずくまる。
「なんだ?怖いのか?」
「そ、そんなことないわ。フェンリルの背に乗ってるんだもの。怖くないわ。」
フッとバカにしたような笑顔をするものだから、思わず体を起こして反論する。
大丈夫よ…フェンリルはラバルと一緒で無茶な飛び方はしない。
ちゃんと私を乗せていることを意識していてくれるもの。
私の声に応えてくれたのか、フェンリルは速度を落とす。
「まぁいい、俺は城下で待ってるぞ。下には気をつけろよ。あの闇に飲まれたら最後、戻ってはこれないからな。」
真面目な顔でそういうルーカスに、ごくりと唾を飲み込んだ。
そんなこと言わずとも、下を見ればわかる。
何処までも深い闇―――――
あまり乗り出すと、その闇に引き寄せられそうだった。
「フェンリル、私たちはゆっくり行きましょう。」
もうすでに遥か下を飛んでいるルーカスを見ながらフェンリルに呼びかけた。

