悪魔であるラファエルの魔力と本質の聖力が上手く均衡が取れた時、ラファエルは目覚める。

しかし、ラファエルの中に残る強すぎる魔力は聖なる母樹に流れる聖力とラファエル自身に眠る聖力を抑え込み、なかなか均衡が取れていない。

神がいうにはラファエルが目覚めるまで最低50年はかかる。

それは私が再天するのに数百年かかったのと同じように、ラファエルもまた目覚めるまでに同じくらい時間がかかる。



けれどラファエルは生まれもって得た強い力がある。

そのため神はラファエルが目覚めるまで最低50年と見積もったのだ。

神や天使、悪魔にとって50年何てあっという間の時間だけど、愛しい人の目覚めを待つ時間はなんて永く感じるのだろうか。

ラファエル様は数百年もの間、私を待ってくれていたというのに、私はたった10年でくじけそうだった。

毎日ここへ来て、呼びかけても返ってくる言葉がないと、このまま目を覚まさないのではないかと不安になる。

小さな溜息を吐き、視線を落としていると、トンと何かが私の背を押した。




「ラバル…」


後ろから私の背を押したのは、いつもこの聖なる母樹に連れてきてくれるラバルだった。

ラバルは私をじっと見つめ、鼻先を近づけてくる。

こうしてラバルが鼻先を近づける時は決まって私が酷く落ち込んでいたり、悲しんでいる時だった。





「大丈夫、ラファエル様は絶対に帰ってくるって言ってたもんね」


10年前の約束を思い出しながら微笑むと、ラバルは元気よく吠えた。