「イヴこそ忘れるな。もう絶対に…」

「忘れない…忘れないから、絶対に帰ってきて」


頬にあてられたラファエルの手を強く握り、決意する。

ラファエル様が私を数百年間待ってくれたように、私もまたラファエル様が目覚めるのを信じて待とうと。






「約束だ…イヴ……必ず……」


吐き出される息が弱くなり、途切れ途切れに紡いだ言葉を最期にラファエルは硬く目を閉じた。



「ラファエル…様?」


ラファエル様も私が目の前で消えたとき、こんな気持ちだったんだ。

何度呼びかけても返ってくるのは無言だけ。

そんな絶望をラファエル様も感じたんだ。




私はラファエル様が目覚めるのを信じて待つと決めた。








けど今だけは…この瞬間だけは一時の別れを嘆くことを許して。





「ラファエル様…いや…お願い目を開けて……」


喉の奥に飲み込んだ言葉が涙と共に溢れ、弱々しく声にする。






「いやぁぁぁぁぁ」


闇が晴れて澄みきった空の下、天を仰ぐような慟哭が響き渡った。