「果たして同じ立場に立たされた時、同じことが言えるでしょうか」
「どういうことですか?」
「こういう事ですよ」
「ッ……なにをッ!」
腰にさげていた魔剣が向けられた先はガブリエルとウリエルに拘束されたラファエルだった。
しかし、分からないのはその刃がラファエルに向けられているかという事だ。
「純粋な心を持つ者ほど堕ちた時の反動も大きい。私はね、何も魔王様だけが世界の脅威だとは思っていないんですよ」
刀身まで黒く染められた刃がラファエルの頬をなぞる様に滑る。
「ミカエルや魔王様が闇を抱えて堕天したように、清廉潔白といわれた貴方の心にも闇は奥底に眠っている。そしてその小さな闇はほんの小さなきっかけでじわじわと心を侵食していくでしょう。こんな風にね」
ザシュッという音とラファエルの小さな呻き声が重なる。
「ラファエル様ッ!」
黒い刀身に紅い血が流れ、ラナとの会話を忘れて思わず叫んでいた。
「何故ラファエル様を…私を殺すんじゃなかったんですか?」
「えぇ、貴方もちゃんと葬って差し上げますよ。ただちょっと試してみたくなったんです。次期神とも謳われた貴方が本当に神たる器なのかを」
焦りを露わにする私を嘲笑い、アザエルは至極愉しそうだ。
そして、偽りの笑顔を張り付けたアザエルは「それに…」と続けた。

